朝、カーテンを開けた時。
買い物から帰ってきた時。
夜、静かな部屋に入った時。
ふとした瞬間に、
名前を呼んでしまう。
「○○」
返事はない。
走ってくる足音も、
しっぽを振る音も、
もう聞こえない。
それなのに、
口は今でも自然に名前を探している。
「あ、ごめんね」
誰もいない部屋で、
小さく笑ってしまうこともある。
ごはんの時間を気にしたり、
いつもの場所を見てしまったり。
いなくなったことは、
ちゃんと分かっている。
でも――
一緒にいた時間が長いほど、
その子は毎日の中に残っている。
呼ぶたびに、
思い出が浮かぶ。
眠そうな顔。
うれしそうに駆け寄ってきた姿。
名前を呼ぶだけで、
そこにいた時間まで戻ってくる。
だからきっと、
癖になってしまったんじゃない。
名前は、
消えないんだ。
大好きだった時間と一緒に、
今もちゃんと、心の中にいる。