手のひらに、全部おさまっていた頃

 

最初に迎えたとき、

その子は手のひらにすっぽり収まるくらい小さくて、

息をしているのか心配になるほどでした。

それがいつの間にか、

腕の中に収まりきらなくなり、

部屋のあちこちに“その子の気配”が増えていきました。


おしっこを失敗したり、

大事なものをかじられたり、

夜中に起こされたことも、一度や二度ではありません。

「もう…」とため息をつきながら片づけて、

それでも気づけば、

その子が眠る姿を何度も確かめていました。



できないことが増えたわけじゃない。

ただ、生きている証が増えただけ。

 

少し困らせて、

少し手を焼かせて、

それでも、毎日を埋め尽くしていく存在。



気づけば、

その子が大きくなったのか、

私の世界がその子で満たされたのか、

もう分からなくなっていました。

 

でも確かなのは、

どんなに手がかかっても、

どんなに振り回されても、

「愛おしい」という気持ちだけは、

一度も減らなかったということです。

手のひらに、全部おさまっていた頃
一覧に戻る

コメントを残す

コメントは公開前に承認される必要があることにご注意ください。