久しぶりに、
あの道を通った。
つい数か月前まで、
毎週のように通っていた道。
助手席にはいつも、
小さく揺れる
君のキャリーケース。
「もう少しだからね。」
そう声をかけながら、
何度この道を走っただろう。
診察の日も、
検査の日も、
先生や看護師さんは、
いつも優しく
君を迎えてくれた。
でも、
君がお空へ旅立ってから、
この道を通ることは
なくなった。
病院の看板が見えただけで、
胸が少し苦しくなる。
まだ私は、
君がいない毎日に
慣れてなんていない。
帰り道、
赤信号で
病院の前に車が止まった。
その時、
病院の玄関から、
何か用事があるのだろうか、
看護師さんが
外へ出てきた。
ふと目が合う。
その人は、
一瞬、
はっとしたような表情を浮かべた。
そして、
静かに目を伏せ、
私へ小さくお辞儀をした。
その姿を見た瞬間、
分かった。
君のことを、
覚えていてくれたんだ。
私も小さく頭を下げ、
信号が青になると、
ゆっくり車を走らせた。
あの日まで、
君を見守ってくれた人たちがいる。
そして今も、
君のことを
そっと思い出してくれる人がいる。
そう思えただけで、
少しだけ、
胸の奥があたたかくなった。