写真の中の猫

 

おばあちゃんの家には、

古いアルバムがある。

 

少し色あせた、
分厚いアルバム。

 

遊びに行くたびに、

私はそれを見せてもらうのが
好きだった。

 

ある日、

ページをめくっていて
気がついた。

 

縁側で眠っている猫。

 

庭を歩いている猫。

 

おばあちゃんの膝の上で
丸くなっている猫。

 

「この猫、
いっぱい写ってるね。」

 

そう言いながら
ページを戻してみると、

本当に、
同じ猫ばかりだった。

 

「この猫、
そんなに好きだったの?」

 

私が聞くと、

おばあちゃんは
写真を見ながら少し笑った。

 

「この子はね、

おばあちゃんが一番寂しかったときに
来た子だったの。」

 

おばあちゃんが
まだ小さかった頃。

 

家族はみんな忙しく、

ひとりで過ごす時間が
多かったという。

 

寂しいとは言えなくて、

誰もいない部屋で、

家族が帰ってくるのを
静かに待っていた。

 

そんなある日、

一匹の猫が
家にやってきた。

 

どこから来たのかは
分からなかった。

 

名前を呼んでも、
返事をするわけではない。

 

けれど、

おばあちゃんが縁側に座ると、

その猫はいつの間にかやってきて、

いつも隣に座った。

 

何をするでもなく、

ただ、そばにいた。

 

「寂しいって、

一度も言ったことは
なかったのにね。」

 

おばあちゃんは
懐かしそうに笑った。

 

そして、

写真の中の猫を
そっと指でなぞりながら言った。

 

「動物はね、

言葉がなくても
人の心を知ってるの。」

 

私はもう一度、
アルバムを見た。

 

そこには、

縁側に座る
小さなおばあちゃんと、

その隣に、
一匹の猫がいた。

 

ふたりとも、

同じ方向を見ていた。

 

私はその写真だけ、

ほかの写真より
少し長く見つめた。

 

ずっと昔の
おばあちゃんの寂しさに、

その猫は今も、

写真の中で
そっと寄り添っていた。

 

写真の中の猫
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