朝、まだ六時前。
カーテンの隙間から
夏の朝の光が
もう部屋に差し込んでいる。
枕元に気配を感じて
目を開けると
君がじっと
こちらを見ている。
「……もう起きるの?」
そう言って
もう一度目を閉じても
君は諦めない。
鼻先で私の腕をつついて
散歩の時間だと
教えてくる。
君と暮らす前の私は、
早起きが苦手だった。
休みの日なら
できるだけ長く
眠っていたかった。
でも夏になると
日が高くなる前に
散歩へ出るのが
いつの間にか
私たちの日課になった。
玄関を出ると
朝の空気は
思ったより涼しい。
まだ静かな道を
君と並んで歩く。
いつもの角を曲がると、
庭の花に水をやっている人がいる。
少し先では、
毎朝すれ違う人が
「おはようございます。」
と声をかけてくれる。
名前も知らないのに
いつの間にか
顔なじみになっていた。
道端の草の色。
少しずつ変わる
日の出の時間。
蝉の声が増えたこと。
朝の風に
ほんの少しだけ
秋の気配を感じる日。
君と歩かなければ、
きっと気づかなかった。
知らない人に
「おはよう」と言うことも
季節が少しずつ
動いていくことも。
君と歩くようになって、
私の朝には
ずいぶんたくさんのものが
増えたんだね。
帰り道。
少し前を歩く
君の背中を見る。
この道を
あと何回、
一緒に歩けるんだろう。
そんなことを考えて、
すぐにやめた。
先のことは、
まだ分からない。
だから明日も、
君に起こされたら
「もう少し寝かせてよ。」
なんて言いながら、
一緒に歩こう。
今しかない、
この夏の朝を。